2021年08月23日
適格合併の要件
組織再編税制において、合併に関する税制適格要件は以下の3パターンにわけて整理されています。
要件 | 完全支配関係 (100%グループ内) | 支配関係 (50%超グループ内) | 共同事業 (持分割合50%以下の法人間) |
---|---|---|---|
①金銭等不交付要件 | 〇 | 〇 | 〇 |
②継続保有要件 | 〇 | 〇 | 〇 |
③従業者引継要件 | 〇 | 〇 | |
④事業継続要件 | 〇 | 〇 | |
⑤事業関連性要件 | 〇 | ||
⑥規模要件 or 経営参画要件 | 〇 |
完全支配関係(100%グループ内)再編の適格合併要件
以下の要件をすべて満たすと適格合併扱いとなります。
- 金銭等不交付要件
- 継続保有要件
各要件の詳細と当てはめ例は下表の通りです。
要件 | 概要 | 検討例 |
---|---|---|
①金銭等不交付要件 | 合併対価として 「合併法人の株式」 または 「合併法人の完全親法人の株式」 のいずれか一方の株式以外の資産が交付されないこと | ・合併対価は「合併法人の株式」のみであり、要件を満たす。 ・合併対価として現金を用いるため、要件を満たさない。 |
②継続保有要件 | 合併前に完全支配関係 があり、 合併後の完全支配関係 の継続が見込まれていること。 | 合併後に株主が一部株式を売却するような予定はなく、 継続保有が見込まれているため要件を満たす。 |
>> 完全支配関係(100%グループ内)再編 / 支配関係(50%超グループ内)再編 / 共同事業(持分割合50%以下の法人間)再編
支配関係(50%超グループ内)再編
以下の要件をすべて満たすと適格合併扱いとなります。
- 金銭等不交付要件
- 継続保有要件
- 従業者引継要件
- 事業継続要件
各要件の詳細と当てはめ例は下表の通りです。
要件 | 概要 | 検討例 |
---|---|---|
①金銭等不交付要件 | 合併対価として 「合併法人の株式」 または 「合併法人の完全親法人の株式」 のいずれか一方の株式以外の資産が交付されないこと | ・合併対価は「合併法人の株式」のみであり、要件を満たす。 ・合併対価として現金を用いるため、要件を満たさない。 |
②継続保有要件 | 合併前に支配関係 があり、 合併後の支配関係 の継続が見込まれていること *支配関係 発行済株式の50%超を、直接もしくは間接保有する関係 | 合併後に支配関係が解消するような株式異動等の予定はなく、 継続保有が見込まれているため要件を満たす。 |
③従業者引継要件 | 被合併法人の直前の従業者のうち概ね80%以上が 合併後に合併法人(またはその完全支配関係法人) の業務に従事することが見込まれていること *従業者 役員・使用人その他の者で、 合併の直前において被合併法人の事業に現に従事する者 *従業者の判定 日雇形態:従業者の数に含めないことができる 出向受入者:事業に従事していれば従業者に含まれる | 被合併法人の直前の従業者100名のうち95名(95%)が 合併後に合併法人の業務に従事することが見込まれているため、要件を満たす。 |
④事業継続要件 | 被合併法人の合併前に営む主要な事業が 合併後に合併法人(またはその完全支配関係法人)において 引き続き営まれることが見込まれていること | 被合併法人の合併前に営む主要事業であるA事業を 合併後に合併法人において引き続き営む予定であり、要件を満たす。 |
>> 完全支配関係(100%グループ内)再編 / 支配関係(50%超グループ内)再編 / 共同事業(持分割合50%以下の法人間)再編
共同事業(持分割合50%以下の法人間)再編
以下の要件をすべて満たすと適格合併扱いとなります。
- 金銭等不交付要件
- 継続保有要件
- 従業者引継要件
- 事業継続要件
- 事業関連性要件
- 規模要件 or 経営参画要件
各要件の詳細と当てはめ例は下表の通りです。
要件 | 概要 | 検討例 |
---|---|---|
①金銭等不交付要件 | 合併対価として 「合併法人の株式」 または 「合併法人の完全親法人の株式」 のいずれか一方の株式以外の資産が交付されないこと | ・合併対価は「合併法人の株式」のみであり、要件を満たす。 ・合併対価として現金を用いるため、要件を満たさない。 |
②継続保有要件 | 被合併法人の株主のうち、 支配株主に交付される株式(議決権のないものを除く)の全部が 支配株主により継続的に保有されることが見込まれること *支配株主 合併の直前に、被合併法人の発行済株式の50%超を保有する株主 (支配株主が存在しない場合、継続保有要件は無し) | 合併後に支配株主が株式譲渡等を行う予定はなく、 継続保有が見込まれているため要件を満たす。 |
③従業者引継要件 | 被合併法人の直前の従業者のうち概ね80%以上が 合併後に合併法人(またはその完全支配関係法人) の業務に従事することが見込まれていること *従業者 役員・使用人その他の者で、 合併の直前において被合併法人の事業に現に従事する者 *従業者の判定 日雇形態:従業者の数に含めないことができる 出向受入者:事業に従事していれば従業者に含まれる | 被合併法人の直前の従業者100名のうち95名(95%)が 合併後に合併法人の業務に従事することが見込まれているため、要件を満たす。 |
④事業継続要件 | 被合併法人の合併前に営む主要な事業が 合併後に合併法人(またはその完全支配関係法人)において 引き続き営まれることが見込まれていること | 被合併法人の合併前に営む主要事業であるA事業を 合併後に合併法人において引き続き営む予定であり、要件を満たす。 |
⑤事業関連性要件 | 被合併法人の主要な事業のうちのいずれかの事業と 合併法人のいずれかの事業とが 相互に関連するものであること *事業 「事業」とは、以下の3要件を満たすものをいう ・固定施設(事務所等)を有していること ・従業者がいること ・商品販売等の収益が生じていること *関連性 「相互に関連する」とは、以下の場合をいう ・同種事業 ・商品/資産/役務/経営資源が同一又は類似する ・合併後に商品/資産/役務/経営資源の相互活用が見込まれる ・合併後に商品/資産/役務/経営資源の一体活用が見込まれる | 【参考】 事業関連性に関する国税QA 事務用品の製造卸売業を行う合併法人と、事務用品の販売業を行う被合併法人が合併することによって、それぞれの事業が一体となってユーザーに直結した流通網の構築を目指して合理化を図るもの(相乗効果が生じるもの)であり、事業関連性がある。 |
⑥-1 規模要件 | 被合併法人の主要な事業のうちのいずれかの事業と 合併法人の関連する事業につき、 売上高 従業者数 資本金 これらに準ずるもの のいずれかの規模割合が、概ね5倍を超えないこと *売上高・従業者数は事業単位での比較、資本金は法人単位での比較となる *「これらに準ずるもの」の例示として国税サイトにて「金融機関における預金量等、客観的・外形的にその事業の規模を表すものと認められる指標」が挙げられている *「⑥-1 規模要件」と「⑥-2 経営参画要件」はいずれかを満たせばよい | 合併法人の資本金が300、被合併法人の資本金が100であり、概ね5倍以内のため要件を満たす。 |
⑥-2 経営参画要件 | 合併法人の特定役員と 被合併法人の特定役員が それぞれ1名以上 合併後の法人の特定役員となることが 見込まれていること *「特定役員」とは、社長/副社長/代表取締役/代表執行役/専務取締役/常務取締役/これらに準ずる者で、経営に従事している者をいう *特定役員のうち「これらに準ずるもの」として国税QAにて「経営の中枢に参画する事業本部長」が挙げられている *「⑥-1 規模要件」と「⑥-2 経営参画要件」はいずれかを満たせばよい | 合併に伴い被合併法人の代表取締役Aと取締役Bは退任するが、経営の中枢に参画する事業本部長Cが合併後の法人において継続的に経営の中枢に参画する見込のため、要件を満たす。 |
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